日本の右傾化

 貧すれば鈍する、ではないが、貧すれば右による。
 これはもう、フランス革命期にナショナリズムが「発明」されて以降、
どうしようもない普遍の真理である。

 小泉・竹中両氏による「改革」によって一億総中流体制が終焉を迎え、
日本人(のある階層)は確実に貧しくなりつつある。失われた自己の尊厳は
共同体の尊厳によって補填されなければならない。であるからには、
かれらはナショナリズムに目覚めるしかないのである。

 日本においては人々は自分の属する共同体への尊厳を抑制されてきた。
これは昭和人による自戒が後の世代によって曲解された故である。
方便として見せた恭順の姿勢がいつの間にか本質に代わっていたのだ。
その結果、今回の経済危機による反動はより大きなものになろうとしている。
全ては、裏目に出たのだ。

 社会が何らかの変化に直面した時、変化の受け皿となるべき社会階層の
有無がその後の社会の運命を大きく左右する。
 明治維新においては諸般の武士がいたが、ロシア革命には帝国を代替すべき
層がなかった。そして、今の日本にも。
 日本は悪平等によって真のインテリを生み出す機構を喪った。インテリは
一代で生まれるものではない。社会の再生産装置によって数代かけて育まれる
ものなのである。

 今盛んにネットで言われるような日本社会全体を動かす反日勢力という存在は
空想の産物にすぎない。しかし今や日本にはかつて日本を日本たらしめた
社会階層はすでにないということを肝に眼じるべきである。
 自信喪失は矮小化を招くが、自信過剰は破滅を招く。