死にフラグ考

死にフラグ」という言葉がオタクの間で市民権を得てかなりになります。本稿では、「死にフラグ」の存在意義と問題点について考察しようと思います。



死にフラグ」とは

そもそも、「死にフラグ」とは何を指す言葉でしょうか?
三つに大別することが出来るでしょう。
第一義としては、一般的なサブカルチャー(漫画、アニメ、ラノベ、ゲーム等)において、将来的に死亡する登場キャラクターが、何らかの「死の兆候」を見せることです。
これは合理的な因果が説明できる「兆候」ではありません。
例えば、「ここで死んでしまったらあまりにも悲劇的だ」と思わせるようなエピソードが挿入されることを言います。
第二に近年のサブカルチャー的ミステリー作品において、登場人物がいくつかの死に直結する「タブー行為(1)」を行うことを指します。
最後の一つはホラー映画などにおける「死にフラグ」です。
これもそれを行うことによって死んでしまう「タブー行為(2)」を行うことや、一定の状況に陥ってしまうことを指します。


本稿では、特に第一義である「サブカルチャーにおける死にフラグ」について考えていきたいと思います。



死にフラグ」の表面的な効果

「俺、この戦いが終わったら故郷にいる幼馴染みに求婚するつもりなんだ」
これが、代表的なサブカルチャーにおける「死にフラグ」の一例です。
このように、「死にフラグ」がエピソードとして挿入されることで、キャラクターの死に対する思い入れが深まるという効果が期待されます。
一個のキャラクターがただ死んでいくというだけでなく、背景を背負った人物としてのキャラクターが死んでいくというのは、極めて感情に大きく作用する装置だと言えるでしょう。



死にフラグ」の存在意義と問題点

確かに「死にフラグ」は効果的な手法ですが、何故これほどまでに多用されているのでしょうか?
その理由は、現在のサブカルチャー全体の抱える宿業にあります。


現在のサブカルチャーは、未曾有の「キャラクター尊重」の時代を迎えています。
ストーリーよりも、キャラクターが重視で、作品から上がる収益にもキャラクターの一挙手一投足が影響するという現状で、果たしてキャラクターを「殺す」ことは出来るでしょうか?
恐らく、出来ないでしょう。
結果として、製作者側は「死に要員」をストーリーに登場させざるを得ません。
それほど視聴者から思い入れが強く抱かれ過ぎず、かつ死んだ時に多少の常道を与えることの出来るキャラクターがベストです。
しかし、中々そうは行きません。なぜなら、オタクというのはそういうキャラクターも見捨てない慈悲深い心をもっているからです。
結果として、オタクのお眼鏡にほとんど適わないキャラクターに「死にフラグ」を負わして殺すか、殺した後に生き返らせるかの二択しかなくなるのです。




オタク文化は今や巨大な市場となっています。
しかし、私たちオタクが作品に対して手前勝手な要求をぶつけることが、作品のストーリーすら捻じ曲げてしまうということは肝に銘じるべきでしょう。






(1) 全員が集まっている広間から一人だけ抜け出す。
犯人の確たる証拠を掴むが、強請ろうとする。などの行為。
(2) 一人だけ別方向に逃げる。
仲間を見捨てる、などの行為。