イスラエルのシャロン首相、職務復帰は困難=病院関係者(ロイター)


エルサレム 5日 ロイター] 脳内出血で緊急入院したイスラエルシャロン首相(77)は5日、手術で出血が止まり、容体は安定しているものの、依然危険な状態にあり、職務復帰は難しいとみられている。
同首相は現在麻酔を施され、人工呼吸器を付けている。
病院関係者らは、首相が一命を取り留めたとしても、職務に復帰可能なまでに回復する見込みは薄いと話している。



イスラエルのアリエル=シャロン首相と言えば、パレスチナ問題における非常に重要なキーマンである。


イスラエル右派の重鎮であるシャロン首相は、パレスチナに対して断固たる姿勢を取り続けてきた政治家として知られる。パレスチナ側が武力闘争を止めない限り、和平交渉のテーブルには着かない、としてきた。
しかし同時にシャロン首相は、イスラエルの元首相ベンヤミン=ネタニヤフの強硬姿勢とは異なり、比較的現実的な意味でパレスチナとの対立を捉えていたように思う。


イスラエルパレスチナの歴史は正に戦いの歴史であり、幾度かの和平の機会を逸しながら、現在も続いている。
最近の大きな転機としては、PLOのアラファト議長の死である。アラファト自身は和平の可能性を信じ、パレスチナの武闘派を巧みに御してきた優れた政治家であったが、皮肉にも彼の死後にこそ、パレスチナの武闘派は沈静化の方向に向かいつつある。


その原因の一つは、アラファト議長という一大カリスマの死去によるものによるパレスチナ自体の厭戦感によるものであろうが、もう一つはイスラエルシャロン首相の態度が軟化したことであろう。


シャロン首相はパレスチナ領域内に設けた分離壁の撤廃を推し進め、パレスチナと適当な所で手打ちにしようとしていたように見える。
現実的な意味で、イスラエルパレスチナ双方は争い続けるべきではないという判断があったのだろう。


しかし、今回シャロン首相が総選挙前に倒れたことで、この目論見は頓挫した。求心力を失ったことで、シャロン首相が新たに組織した新政党カディマは瓦解するだろう。
そうなれば、政権の座に着くのは元首相ベンヤミン=ネタニヤフになる可能性が高い。強硬なネタニヤフ政権ではパレスチナとの和平は望むべくも無い。




その影響が拡大して第五次中東戦争が勃発するというのは発想が飛躍しすぎているかもしれない。
イスラエルの急先鋒の一人で、最も力を蓄えていたイラクのサダム=フセインは今や囚われの身である。


しかし、世界的な原油高という現状は、中東に大きな力を与えている。
戦争、という外交オプションは近年ますますその発動に必要なコストが高まりつつあるが、攻撃的な外交オプションは物理的な戦争。威嚇行為のみにとどまらない。
今年は、中東の情勢に注目すべきであろう。